はじめに
この記事は、NFLaboratories Advent Calendar 2022 - Adventar 9日目の記事です。
こんにちは。ソリューション事業部セキュリティソリューション担当の松藤です。
普段の業務では、お客様に提供するシステムやサービスの開発をスクラム手法を用いて実施しており、私自身、スクラムマスターと開発者の兼任という立場で活動しています。
また、本業務以外には組織のアジャイルスキル向上を目的としたコミュニティの運営や、半年に1度セキュリティソリューション案件に携わる方々全体を巻き込んだ対話会の企画や実施を行うことで、これまでの自分たちの行動や思いをフラットな視点で共有し振り返る場を設けることで組織改善に繋げ、お客様への提供価値を高めていくことを目指しています。
そこで今回のブログでは、2022年11月に行った対話会で実施したOST(オープン・スペース・テクノロジー)という手法について共有します。
規模感としては、2日間の4開催(午前の部・午後の部)で参加者は約80人程度でした。
OST(オープン・スペース・テクノロジー)とは?
そもそも、皆さんはOSTというワードを聞いたことがあるでしょうか?
OSTとは、「オープン・スペース・テクノロジー」の略であり、組織開発のワークショップの手法の1つです。オープン・スペースは「(対話の)広場」、テクノロジーは「(対話の)技術」を意味しており、「人と組織の「アイデア実行力」を高める - OST(オープン・スペース・テクノロジー)実践ガイド」の著者らはOSTの定義を「実行したいアイデア・解決したい課題・探求したいテーマを参加者が提案し、それに賛同する人が集まって話し合うことにより、具体的なプロジェクトを生み出したり、テーマについての理解を深めたりするためのワークショップ手法」であると定義しています。
OSTの起源は、1985年に行われたある大きな会議の中で、皆が一番充実していたと感じた時間が、実はコーヒーブレイクだった、ということに始まっているため、OST実施の中では、誰もがリラックスをして話せるようにカフェスペースを設けたり、議論中も自由に飲食できるようにしました。
どうしてOSTをしようと思ったか?
今回の対話会においてOSTを採用した理由は、これまでの我々の対話会では主にワールドカフェといった手法を用いて抽象的なテーマに対して自由に対話してもらい、特に次へのアクションには繋げなくても良いといった課題解決というよりも対話を通した横とのコミュニケーションを重要視していました。しかし、対話会後のアンケートの声に、「より具体的な課題について話したい」「何か変えることが出来る会でありたい」などがあったため、具体的な解決したいテーマについて議論したい人たちが集まり解決や新しい発見に繋げることができるOSTを採用することにしました。
www.kaonavi.jp
OSTの特徴
OSTは”4つの原則"や"移動性の法則"、"蜂"、"蝶"という特徴の基に成り立ちます。
4つの原則とは
1. ここにやってきた人は、誰もが適任者である
2. 何が起ころうと、それが起こるべき唯一のことである
3. いつ始まろうと、始まった時が適切なときである
4. いつ終わろうと、終わった時が終わりのときである
移動性の法則とは
参加者が自分の時間を最も生産的に使っているかどうか、学習に役立っているかどうか、その場に貢献できているかどうかは、全て参加者自身の責任であり、参加した分科会(あるテーマに対する議論の場)が、自分の期待した場ではないと感じたら、その場に止まるのではなく他の分科会に移動すべきである
蜂
ある分科会から別の分科会に移動する人のことである
蝶
どの分科会にも参加しない人のことである
そのため、OSTでは上記の特徴に従い自分が興味があり熱意を持って参加したいと思えるところに自由なタイミングで移動できたり、参加せずに観察したり、最初から最後まで居座ることもできます。
OSTの流れ
OSTは主に以下の流れで企画から始まり、クロージングで終わります。
1. 企画
2. 準備
3. オープニング
4. テーマ出し
5. マーケットプレイス
6. 分科会
7. クロージング
1つ1つの目的と我々が何をしたのか簡単に紹介していきます。
1. 企画
企画フェーズは、「そもそも何のためにOSTを開催するのか」という目的を明らかにするところから始まります。OSTではさまざまな立場や利害関係者が集まり話し合うことで何か新しい取り組みが始まったり、新鮮なアイデアが生まれる可能性のある目的を設定する必要があります。
今回の対話会は企画から実行まで私を含めた9名の実行委員メンバーで実施し、約2ヶ月間それぞれの忙しい仕事の合間で集まり、本当にギリギリまで企画を行ってました。それぞれ思いを共有し時にはぶつかり議論がまとまらないこともありましたが、そう言い合える場であったり、そういう熱いメンバーが集まったことは非常に価値のある場だと感じました。
2.準備
準備フェーズは、会場の選定、設営、備品、カフェスペースに用意するものなど、当日の参加者がリラックスして議論し、OSTのゴールを達成するために必要な準備を行います。
今回、我々は、テーマを議論する3つのテーブルとカフェスペースを配置し、テーブル上には模造紙と自由にメモを取ったりまとめるためのマジックペンを用意しました。また、誰もが見える所にスクリーンを設置し議論テーマとその背景などを表示させました。
3. オープニング
オープニングでは、参加者全員を集めOSTが開催された目的やOSTの特徴である、"4つの原則"、"移動性の法則"、"蝶"、”蜂"などについて説明します。
オープニング時の気づきとして、どうしても司会者が目的や特徴を淡々と説明する時間があり、参加者が緊張したりと少し固い場になってしまうため、カフェのようなBGMを流したり、司会者が一言「固くならずにリラックスして楽にやりましょう」とリラックスできる空気づくりが大切だと感じました。
4. テーマ出し
テーマ出しでは、参加者がオープニングでのOSTの開催目的を聞き、自ら解決・議論したい内容をその場で出し、その場で賛同者を求めます。
今回実施したOSTでは事前に"現在のプロジェクトの課題"や"ざっくばらんに話したい内容"を募集し、その中から10テーマ選出し、その場で参加者に議論したいテーマを3つ選んでもらいました。
テーマイメージ
・チーム間の理想のコミュニケーション、つながり方
・モチベーション維持・向上の仕方
・プロジェクト全体に対する良いところ、改善したいところ
・プロジェクトにおけるモヤモヤポイント
・理想の組織像について
etc.
5.マーケットプレイス
テーマが出揃いその分科会に参加するか決めるとき、次の問題が起こることがあります。その場合はテーマの提案者に相談し、話し合い順序を入れ替えたりすることができます。
・自分が参加したい分科会が、同じ時間帯で重複している
・話し合う順序を変えた方が良さそうなものがある
・似たようなテーマがあるので、一緒にできそうなものがある
6. 分科会
出したテーマに対して話し合いを行いながら議事録を作成します。
今回の議事録は以下の内容を記載してもらうようにお願いしました。
テーマ
話し合いの内容
今後のアクション
7. クロージング
参加者が感想を言い合ったり、議事録を発表したり、壁に貼り付けて誰もが見えるようにすることで参加者全体に各テーマごとに話した内容が行き届くようにする。
我々は、約7分程度でテーマに対する発表と質疑応答を行うことで参加者全体への内容の共有を行いました。
やってみた感想
今回OSTをやってみた感想として、日頃業務を通して繋がりがある方や繋がりがあまりない方々と具体的なテーマについて深く議論することで、参加者同士がその場を通して初めてコミュニケーションの場となったり、議論をすることで新しい発見が得ることができた。また、クロージングの中でそのテーマを解消するために「具体的にそれやってみよう!」などの次のアクションにも繋がる場となったため、大変有意義な対話会になったと感じています。
最後に
OSTを使うことで以下のような内容も実現出来ると言われています。
そのため、以下の内容が自分が実現したいものとマッチする場合は是非OSTにチャレンジしてみて下さい!!少なくとも何か変化を引き起こすことができるはずです!
OSTで実現出来ること
1. 一人一人が自らの思いや志を高め、その実現に向けた経験や機会を増やすことができる
2. 異なる組織をつなげるリーダシップを持つ人材が醸成される
3. 全員がリーダシップを発揮する社会を実現することができる