NFLabs. エンジニアブログ

セキュリティやソフトウェア開発に関する情報を発信する技術者向けのブログです。

皆さん、「振り返り」やってますか?

はじめに

 こんにちは。事業推進部で基盤開発や維持運用を担当しているMJです。この記事は、NFLabs.アドベントカレンダー12日目です。今年ももう残すところわずか9日となりますがいかがお過ごしでしょうか。
 

突然ですが、皆さん、定期的に業務の「振り返り」を行っていますか?振り返りは、組織や個人の成長には欠かせなく大事な事だと考えています。そして、皆さんも、大事な取り組みであることは理解していると思います。しかし、率先して「振り返り」を実践している人は少ないのではないでしょうか。

 私が所属するNFLaboratoriesのほとんどのチームは、アジャイル手法の1つのスクラムを用いて、日々の開発や運用業務を行っております。スクラムでは、1~2週間といった短い期間を「スプリント」とし、スプリントの最終日にレトロスペクティブと言った、チームでスプリントを振り返り、次のスプリントに活かすためのイベントが用意されています。
言い換えれば、スクラムを用いることで、半強制的に振り返りを行うこととなります。

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スクラム開発フロー図:(業務システム開発へのスクラム開発適用事例https://www.arksystems.co.jp/cases/scrum-railway/)より引用

 私は、このスクラム手法での業務を行うまで定期的に振り返りをすることはなく、あってもせいぜい四半期に1回の節目のタイミングだけでした。どうしてやらなかったかというと「日々の業務が忙しくて振り返りの時間がなかった」「やり方が分からなかった」「周囲も定期的にやってなかったなど」「やったほうが良いのはわかっちゃいるけど。。。」「やってみたけど効果なかったし、、、」言い訳を挙げればきりがありません。しかし、振り返りを正しい手法を用いて定期的にやり始めることによって多くの良い変化が自分や組織に生まれたため、それを読者に少しでも伝えれたらと思い、尚且つ、年末と「振り返り」を行うにはよいタイミングだと思い、この記事の執筆に至りました。


そもそも振り返りの意味とは?

 振り返りとは、これまでの自分自身や組織の成功や失敗などの行いを思い返し、見つめ直し、思考や気持ちを整理し、過去の行いを後悔し、そこから学び、次に活かすことを意味します。「振り返り」は、「反省」よりも未来に向かって使われる言葉であり、「反省」とは、「過去の自分の言動についてよく考える」ことを意味します。さらに「次にどう改善するか」まで考える意味も加わっていくため、成長するためには「反省」ではなく「振り返り」をしていく必要があります。


振り返りのメリット
 振り返りを行うことで、自分や組織がとった行動や決断がどのような結果に結び付いたのかを見つめ直し、その原因を分析し、次に同じ状況が起こった時の対策を取ることができます。振り返りは個人や組織が成長するためには必要不可欠なのです。

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チーム内での振り返りイメージ


仕事に関する振り返りの効果例

  • 自分が出来ること、出来ないことの見える化ができる
  • 自分の成長が実感しやすくなる
  • 目標に対する達成度合いを把握の確認が出来る
  • 原因について論理的に考えるため、達成できなかったことを感情的に責めなくなる
  • 組織の課題見える化し、建設的な取り組みができる組織づくりにつながる
  • 問題や課題を自分1人で抱え込まず、安心感が生まれる。また、早期発見に繋がる
  • ミスを恐れずに自信を持って取り組めるので、チャレンジする空気が生まれる

など


振り返り手法
ここでは、よく我々組織の中で使われている代表的な振り返り手法をいくつか紹介します。


KPT(Keep Problem Try ):過去の成果を振り返る

KPTとは、以下の3つの要素に分けて現状を分析し、次のアクションを決める手法です
K (Keep:良かったこと(今後も続けて行くこと)

P (Problem:悪かったこと(今後やめること、課題となったことを見つける)

T (Try:問題や課題に対し次に挑戦してみること)

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KPT実施イメージ


やり方

  1. 個人や組織(チーム)毎に、15分程度の時間で付箋に前回の振り返り以降で感じたKeep,Problemを書き出し、ホワイトボードに貼り付け全体に共有
  2. KeepやProblemの内容から、「Try」を書き出し次のアクションとして決める 

 KPTで大事なことは、チームメンバが感じたKeepとProblemを深掘りし、何がよかったからKeepなのか、何が悪かったからProgramなのかをチーム内でしっかり認識を合わせそこから次のTryを導き出すことです。もしかしたら、メンバによってはそう感じてない人がいるかもしれないし、チーム内で課題認識があっていないものに対してTryを決めてもメンバによって温度感が生じてしまいTryをやる人、やらない人が出てきてしまいます。そのため、チーム内でしっかり認識を合わせ一体となってTryを決め取り組むことでチームとしてさらに成長することができると私は感じています。また、私のチームでは、メンバの意見を理解する努力を怠らずに理解するまでしっかり議論することを心掛けており、Tryを導き出すときはKeepやProblemから複数のTry案を出し、Try案から絶対実施する3案を投票で決めることによってチーム方針を決めております。もちろん投票といえど全員が納得したものであることが前提です。また、3案に絞る理由はTryを4、5、6案と多くなると意識がブレてしまい中途半端になることを避ける為ですが、チームで1番ベストだと思う数を設定するのが良いと思います。

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筆者が趣味のトレーニングでKPTをやってみた

Mad Sad Glad(怒・哀・楽): 過去の感情を振り返り

MadSadGlad(以下、MSD)は、感情ベースでイベントを振り返ることで、自己・他己の感情に向き合い、KPTなどで見つけられない潜在的な課題をチームが見つけるきっかけとなります。
M (Mad(怒):イラッとしたこと、仕事上パフォーマンスを下げる要因になったこと など)
S (Sad(哀):残念に思えたこと、改善の必要性を感じたこと など)
D (Glad(楽):嬉しかったこと、やってて楽しかったこと良かったこと など)

やり方

  1. 個人や組織(チーム)毎に、15分程度の時間で付箋前回の振り返り以降で発生した感情をMad(怒)、Sad(哀)、Glad(楽)毎に書き出し、ホワイトボードに貼り付け全体に共有
  2. 各感情となった原因/理由の分析と、Mad,SadをGladにするための解決策を検討したり、組織内でどのような感情が出ているかを把握する

 MSDの大事なことは、自分が感じているMad(怒)、Sad(哀)、Glad(楽)を曝け出しチーム内にしっかり共有することがとなります。「ちょっとしたことだから言わなくていいや」は絶対だめです。何も言わずに溜め込んでしまうとストレスにもなりますし、放っておくと再度どこかで同じ気持ちに辿りついてしまったり、言わなかったことでチームに不利益を及ぼすことがあるため、自分自身にもチームにもよくありません。クリティカルで優先度の高い課題を解決することが仕事では重視されますが、チームなどの組織においては些細な障害や不満の積み重ねがボトルネックになったり、人によっては退職の理由になったりします。そのため、その些細なことこそ不満の種だと感じて取り組んでいくことが不満や障害を取り除き良いチーム/組織作りにつながると私は考えます。私のチームでは、素直に個人の感情が出せるように日頃からコミュニケーション(会話)を大切にすることで、誰もが気軽に言いたいことを言える環境づくりを意識しております。変なパワーバランスがあると言いたいことも言えなくなってしまいますからね。。。。 (笑)

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MadSadGladの実施イメージ

今回紹介した、KPTやMadSadGladは、シンプルであるため、これまで振り返りを手法を使ったことがない方には、是非お試しで実施いただけたらと思います。その他、Fun/Done/LearnやCelebration Gridなど数多くの振り返り手法があるため、興味があれば調べていただくと良いです。


振り返りの注意点                     

 振り返りは行ったら終わりではありません、振り返りによりしっかり今後に生かせるような対策を考え、行動に結びつけることが重要です。しかし、振り返りから出た次の対策や行動が頭に定着していないと意識的に実行に移すことはなかなか難しかったりします。そのため、私は、組織内では、定期的にチャットでリマインドを流したり、常に見えるところに貼り付けることで意識的に取り組めるような工夫をしています。この方法は、人それぞれであり、個人が見やすい、やりやすい方法を採用するのが良いと考えます。また、私の場合は、ディスプレイの横に振り返りからでたTryや気をつけることを付箋に書き、貼り付けて、達成できれば破棄しています。また、過去を振り返れるようにメモに履歴として残しています。


今後の取り組み

 以前の記事で、アジャイルコミュニティ(NFLabs.アドベントカレンダー7日目)について紹介されておりますが、私はその1メンバーです。そこでは社内だけでなく、お客様を巻き込んだアジャイルの知見を共有する取り組みをしており、ディスカッションテーマで「振り返り」で行ったことがありました。その際に、我々NFLaboratories内では当たり前となっている「振り返り」は、他の組織やお客様環境の中では当たり前ではなく、以前の私と同じ悩みを持っていることを知りました。そのため、私はアジャイル(スクラム)を業務に採用せずとも、「振り返り」の重要性をチャットや記事で「振り返り」などの業務改善のための取り組みを配信したり、実際に一緒に取り組んでみることで重要性を伝え、少しでも周囲の組織やお客様といったステークホルダーの課題が解消し一緒に成長できればと考えております。

 

最後に一言

この記事を読んで少しでも「振り返り」をやってないな。できてないな。と思った方は、まずはやってみてください!実施するコスト以上の効果が得られると思います!