
はじめに
みなさん、こんにちは。教育ソリューション担当の宮澤です!
エヌ・エフ・ラボラトリーズでは、セキュリティエンジニアの育成方法として、アクティブラーニングを取り入れています。一般的にアクティブラーニングというと、討論する・体験する・人に教えるといった要素が含まれますが、弊社の研修では、グループワークや実際に手を動かして体験する演習の他に、講師からの発問などを取り入れており、より教育効果の高い研修の実現に向けて様々な取り組みを行っています。
今回は「問いの意図とデザイン」をテーマにチーム内で行ったワークショップの様子や具体的な実施内容、感想を紹介します。
背景
皆さんは、学校の授業や研修を受講している際に、発問や演習がどのような意図で行われているか、考えたことはあるでしょうか?
例えば、研修の導入の発問であれば、講師から研修生に対して、これから学習するトピックスについての理解を確認する問いかけを行うことが多いと思います。これには、講師が研修生に対して、「既知」と「未知」の境界を確認する問いかけを行うことで、「まだわからない」、「理解が曖昧なところがある」と研修生本人に気付かせる狙いがあるでしょう。
研修がある程度進行し、研修生の理解が進んだ段階であれば、研修生がこれまで得た知識や経験をもう一度振り返らせる問いかけを講師が行うこともあるでしょう。
知らないことや必要に感じていないことに対して注意を向けることはとても難しいことです。たとえ目の前に重要な情報があったとしても、学んでいる本人が重要でないと感じている場合、その情報を読み解くことはほとんどないでしょう。
そこで、研修生が見落としてしまった情報に講師が気付かせ、それに注目するよう働きかけるような発問をすることができれば、新たな気付きを促すことができます。
他にも、講師から研修生に対して具体的な内容について問いかけを行うことで、研修生の認識のズレに働きかけたり、特定の状況では成立する内容が他の状況でも成り立つか確認することで本質的な理解を促したりすることもあります。
このように、状況に応じて効果的な発問をすることで、新たな発見や知識・スキルの習得を後押しすることが期待されます。また、問いを見直すことで、目標の達成までのアプローチが変わり、研修のデザインが変わります。
このように、より効果的な研修を実現するためには、問いによってどのように働きかけたいか意識することが重要です。
エヌ・エフ・ラボラトリーズの研修では、 グループ討論やハンズオン演習、相互に教え合うといったアクティブラーニングを通して、自ら考え、試し、行動し、攻撃者側の視点で防御策を講じることができる人材の育成しています。
研修では、資料に記載した問いだけでなく、講師がその場で発問する問いもあります。
研修生の頭を働かせる問いとはどのような問いでしょうか?
なにか問いかけを行えば、相手は考えるというものではありません。例えば、講師が研修生に対して「Webサーバとは何でしょうか?」と問いかけを行っても、Webサーバについての知識を持っていない研修生は解答を考えられないでしょう。また、研修生がWebサーバについて何か知っていたとしても、講師からの問いかけの内容が抽象的すぎるため、研修生は解答を考える際に困惑することが多いと思います。
もし講師が研修生に対して「Webサーバの構成について理解してほしい」と考えているのであれば、知識や経験がない研修生に対しては、一度Webサーバの構築を手順通りに行ったうえで、その環境を例に「サーバは複数のミドルウェアで構成されています。構築したWebサーバはどのようなミドルウェアで構成されているか調べてみてください」と発問することで、研修生はWebサーバについてより詳細に考えられるかもしれません。
このように、発問によって学習効果を高めるには、受講生が問いに取り組めるだけの経験や前提知識を持っていること、そしてそれに合った問いかけ方が求められます。講師から研修生に対して、重要そうなことをテーマに問いかけを行えばよいというわけではありません。研修を通して理解してほしいことを講師が意識し、意図をもって問いかけを行う必要があります。
そして、より効果的な問いかけを行うためには、このことを講師自身が自覚することがまずは大切です。
そこで、今回はチームメンバを対象にワークショップを実施し、改めて「問いかけの意図とデザイン」についてグループワークで考えを深めました。
ワークショップの実施形式
- 1グループ4~5名程度(2チーム)
- リモート通話で実施
- 参加者:自チームの9名
ワークショップの実施内容
1. グループワーク
- グループワークのテーマについて、自身の講師経験を振り返り、話し合う
- グループワークのテーマ:「講師の時、研修中にどのような意図でどのような問いかけを実施したか?」
2. チーム間共有
- グループワークで各チームで話し合った内容について、全員で集まって共有し、意見交換する
3. まとめ
- 各チームであがった意見をふまえて、今後の方針などについて自由に話し合う
実施結果
各グループで挙がった意見から一部抜粋します。
- 異なる視点に気づかせるため
- 前日学んだことを復習し、定着させるため
- 意識してなかったところ(わかった気になったところ)に気付けるようにするため
- 視線を研修に向ける為(聞いてるばっかだとぼーっとしちゃう)
- 前任の講師の問いかけを表面的に真似るだけだとうまく機能しなかった経験があったので、身に着けてほしいことを考えるようにしている
- 1問1答で知識の有無を問う問いかけでは考えを促すことができなかったので、様々な解答が考えられる問いかけを行った
- これから扱う内容について疑問点を取り上げる問いかけを行うことで、アイスブレイク的にこれから扱う内容の理解度を確認した
- 研修の内容から興味の幅を広げるため、研修資料で説明されてないものの中から、図やソースコードなどからイメージしやすい題材を取り上げて問いかけた
また、まとめのセクションでは、各チームであがった意見を踏まえたうえで、研修のデザインや今後の方針について自由に話し合いました。

感想
今回は、問いの意図について考え、チーム内で対話をしながらその重要性について再認識してもらいました。
実際に試行したことで、開催者である筆者自身も新たな観点に気づき、問いのデザインについて深く考える良いきっかけとなりました。
リモート通話での開催ではあったものの、チームメンバ同士で活発に対話が進んでいたことが印象に残っています。ワークショップの中では「発問を行うタイミングによって意図が異なることに気付くことができた。」、「技術的な内容だけでなく、研修の意図についても講師間で共有できる仕組みが必要だと改めて認識した。」といったポジティブなコメントも頂き、大変嬉しく思います。
これをきっかけに、今後より効果的な研修を提供ができればと考えております。
最後となりますが、ご参加・ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
弊社が提供している研修にご興味をお持ちの方は、以下の窓口からお問い合わせいただければ幸いです。
エヌ・エフ・ラボラトリーズ 問い合わせ窓口
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