NFLabs. エンジニアブログ

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USB給電規格を整理し、手元の充電器を実測してみた話


概要

  • みんな大好き低レイヤ(USB給電)のお話です。
  • 前半では、「USBで主に使われている給電規格」についてまとめています。
  • 後半では、筆者の手元にある複数の充電器がどの規格に対応しているのかを実際に調べ、その結果を紹介します。

はじめに

この記事は、NFLaboratories Advent Calendar 2025*1 6日目の記事です。

こんにちは、研究開発部 自称コーポレートITエンジニアの橋本です。

2024年は「USB Type-Cケーブル」の記事を書きましたが、「USBの給電についてはあまり書けていなかったな~」と急に思い出して給電の記事を書くことにしました⚡

blog.nflabs.jp

USBで主に使われている給電規格

給電規格とUSBケーブル

USBケーブルの種類により「対応する給電規格」や「流せる電流量」が異なります。

Type-CやType-Aといったコネクタの詳細については2024年のNFLabs.アドベントカレンダーに写真付きでまとめていますので、そちらもご参照ください。

ケーブル構成と給電規格

ケーブル構成により対応する給電規格が異なります。

主要なケーブル構成と給電規格は以下の通りです。

ケーブル構成 対応する給電規格 最大出力の目安
給電側:Type-C
端末側:Type-C
USB Power Delivery
Quick Charge 4+ / 5+ 等
主流は30W~100W
最大240W
給電側:Type-A
端末側:Type-C
USB BC 1.2
Quick Charge 2.0 / 3.0 等
約18~36W
給電側:Type-C
端末側:Lightning
USB Power Delivery(Apple仕様) 等 約20~27W
給電側:Type-A
端末側:Lightning
USB BC 1.2
Apple 2.4A 等
約12W
ケーブルと電流

直流給電では電流量(アンペア)の二乗と抵抗値で発熱量が決まります。
そのため、特に高いアンペアでの給電では専用のケーブルが必要となります。

概ねの目安としては以下のとおりです。

最大アンペア数 ケーブル要件
3A以下 通常市販されているケーブルであれば特に問題無し。
3A超~5A以下 E-Marker チップ搭載ケーブル必須。
5A超 一部メーカー独自規格で使用。
メーカー専用ケーブルが指定されることが多い。

3Aを超える高いアンペア数での給電をするにはケーブルに送電能力等を示すチップ(E-Marker)が必要です。
最もメジャーな「USB Power Delivery(Standard Power Range)規格」では「20V×3A = 60W」なので、「60Wを超える場合はE-Marker チップ搭載ケーブルが必要」というのがざっくりとした目安です。

給電規格の詳細

USB-IF (USB Implementers Forum) 規格

最近は USB-IFが定める「USB Power Delivery」がデファクトスタンダードになっています。

仕様名 最大電力 電圧 ケーブル要件 用途
USB Type-C Current 15W 5V 特に無し スマホや小型機器
USB-PD(SPR) 100W 5V/9V/15V/20V 3A超は E-Marker 搭載必須 スマホやノートPC
USB-PD(PPS) 100W 3.3V~21V(可変) 3A超は E-Marker 搭載必須 一部のPPS対応機器
USB-PD(EPR) 240W 5V/9V/15V/20V/
28V/36V/48V
3A超は E-Marker 搭載必須(※) ゲーミングPC等

PD = Power Delivery
SPR = Standard Power Range
PPS = Programmable Power Supply
EPR = Extended Power Range

※加えて、高電圧にも対応するため、「EPR対応」が明記されているケーブルが必要です。

メーカー独自規格

Quick ChargeはQualcomm社の規格です。
Qualcomm社はAndroidスマホのSoCとして搭載されることが多いSnapdragonシリーズを開発しているため、対応端末が非常に多いです。
最近はUSB-PDがデファクトスタンダードになって来たこともあり、Quick Charge4.0以降はUSB-PDと互換性を保ちつつ一部拡張を行っています。

仕様名 最大電力 電圧 ケーブル要件 補足
Quick Charge 2.0 18W 5V/9V/12V/20V 特に無し
Quick Charge 3.0 36W 3.6V~20V(可変) 特に無し
Quick Charge 4+ 100W 3.6V~20V(可変) 3A超は E-Marker 搭載必須 USB-PD互換
Quick Charge 5+ 140W USB-PD(SPR,PPS)同様 3A超は E-Marker 搭載必須 USB-PD互換
最大7A出力

上記以外にも「Samsung」「Huawei」等の独自規格がありますが、Quick Chargeと同じく最近はUSB-PDと互換性を保ちつつ一部拡張という方式が多いようです。

手元にある充電器がどの給電規格に対応しているか調べてみた

とりあえずやってみた系なので完全おまけです(笑)

測定には2024年のアドベントカレンダーでも使用したAVHzY社のテスターを使用します。

AVHzY社のテスター

測定結果

テスターで手元にあった4つの充電器を測定してみました。

※ 本テスターは QC5 などの最新規格には未対応のため、表示結果が実機仕様と一致しない場合があります。

ELECOM社EC-AC8870MN(70W)

USB-PDにはしっかりと対応しています。

Quick Chargeは4+には対応しておらず、4.0のみ対応と表示されています。また、下位の2.0や3.0も非対応と表示されています。
その他のメーカー独自規格にはほぼ非対応です。

USB-PDで充電する分には問題無いですが、それ以外の充電規格で充電したい方は注意が必要かもしれません。

EC-AC8870MN
測定結果(EC-AC8870MN)
Anker社 Nano-II(65W)

USB-PDにはしっかりと対応しています。

Quick Chargeは4+に対応しており、下位の2.0や3.0にもしっかりと対応しています。
また、Apple 2.4Aにも対応しています。
その他のメーカー独自規格にはほぼ非対応です。

USB-PD、Quick Charge、Apple 2.4Aに対応しているので、スマートフォンの充電で困ることはなさそうです。

Nano-II
測定結果(Nano-II)
Anker社 Nano Charging Station (6-in-1, 67W)

USB-PDにはしっかりと対応しています。

Quick Chargeは4.0に対応しており、下位の2.0にも対応しています(なぜか3.0は非対応との表示)。
また、Apple 2.4Aにも対応しています。
加えてHuawei社等のメーカー独自規格に対応しています。

USB-PD、Quick Charge、Apple 2.4Aに対応しているので、大半のスマートフォンの充電はできそうです。

Nano Charging Station (6-in-1, 67W)
測定結果(Nano Charging Station)
MATECH社 Sonicharge 100W Pro X

USB-PDにはしっかりと対応しています。

Quick Chargeは4+に対応しており、下位の2.0や3.0にもしっかりと対応しています。
また、Apple 2.4Aにも対応しています。
その他のメーカー独自規格にも幅広く対応しています。

今回比較した4製品の中では一番大型ではありますが、最も幅広い給電規格に対応していました。

Sonicharge 100W Pro X
測定結果(Sonicharge 100W Pro X)

おわりに

本記事では「USBで主に使われている給電規格」をまとめ、手元にある実機の測定結果を掲載させて頂きました。
普段はSaaSやソフトウェアを触ることが多いのでたまにはハードウェアを触ると楽しいですね♪